日本のヤシ 世界のヤシ

ヤシの木は南国情緒あふれる植物ですが、どのような特徴があるのか一般にはあまり知られていません。ヤシの木という植物を詳しく知ることで、人々の生活とヤシの木との深い関係が見えてきます。

ヤシの種類

ヤシの木と一口に言っても実に多くの種類があります。ヤシについての一般的な方のイメージとして、ハワイや南国のリゾートに生えているヤシを思い浮かべがちですが、それだけがヤシの木の全てではありません。樹高が30mを超すものから、テーブルの上で観葉植物として眺めて楽しむものまで、その樹種は非常に多く、バラエティーに富んでいるのが特徴と言えます。

 

そもそもヤシってどんな植物?

ヤシ目・ヤシ科の植物で、熱帯から亜熱帯を中心に分布しており、その種類は2000~3000種ともいわれています。日本にもその仲間が数種確認されており、テーブルヤシなどの比較的小さな樹種は観葉植物として人々の生活に近いところで親しまれているものもあります。

一年中葉を茂らせる常緑であり、幹の先端部分から放射状に葉を生やすことが特徴です。なかには実をつける樹種もあり、ココヤシの実である「ココナッツ」は誰もが知る南国のフルーツとしても有名で、実の中に入っている胚乳と呼ばれる液体は飲用することも可能です。また、ナツメヤシの果実であるデーツは、日本でもソースの原材料の一つとなるなど、日本の食生活とも馴染みの深い樹であると言えます。

一般的なヤシの木は、熱帯や亜熱帯などの温暖な気候でおおむね気温20~25℃の環境を好むことに加え、水はけのよい土壌で育ちやすい植物として知られており、家庭で育てる場合でも水はけの悪い土で育てると根腐れを起こす場合もありますので注意が必要です。また、多くの種類が日光が当たる方向に向かって生長していくことからも、極力日当たりの良い場所で育てることが必須です。

 日本のヤシ

前述したように、ヤシは熱帯や亜熱帯のような、一年を通して温暖な気候を好む植物です。日本のように冬季に気温が下がるような寒い地域は基本的にはあまり生育に適しておらず、雪が降るような寒い地域では越冬できないとされる植物ですが、それでも南西諸島や九州の一部、沖縄など、日本の中でも温暖な地域に自生している樹種もあります。

日本国内で自生しているヤシの仲間として、広く知られているのがシュロと呼ばれる樹種です。シュロはヤシの中でも耐寒性が非常に高く、九州南部や沖縄を中心に、冬季に著しく気温が落ちる東北地方や北海道でも生育していることがあります。

シュロは、日本の庭園や大学構内の装飾樹としてもなじみが深く、樹皮については古くからシュロ縄として利用されており、現在はウレタンフォームに取って代わっていますが、かつては椅子やベッドなどのクッション材としても使われていました。

沖縄のヤシ

沖縄は日本の中でも周年を通じて比較的温暖な気候ですので、ヤシが生育しやすい環境と言えます。実際、沖縄に行くと街路樹や道路脇にもヤシを見ることができ、南国情緒を存分に味わうことができます。

ココヤシは、一般的に「ヤシの木」と聞いて一番に思い浮かぶような、いわゆる「ヤシらしいヤシ」とも言える樹種ですが、沖縄でもこの種類を頻繁に見ることができます。

ただし沖縄のココヤシは、熱帯に生息するココヤシと比較しても実をあまりつけず、実がなったとしても完全には成熟しないという点で異なっています。また、本来ココヤシは樹高が最大で30mにも達するような大型の品種ですが、沖縄本島で見られるようなココヤシは、熱帯や亜熱帯の地域のそれと比べてもやや小さめのサイズまでしか生育しないと言われています。

ハワイのヤシ

ハワイは周年を通じて温暖な気候なため、ヤシの木の生育には適した環境であると言えるでしょう。ハワイで見られるココヤシは、沖縄のそれよりもはるかに大きく育っている様子を見ることができます。温暖な気候を好むヤシの木の象徴的な光景です。また、ロウルと呼ばれるハワイ固有の樹種も見ることができます。

ハワイの固有種・ロウルとは?

ロウルはハワイ原産の品種であり、中には樹高が30mを超えるものもあります。近年では19種類あるロウルの仲間のうち、半数近くが希少種や絶滅危惧種とされています。ハワイに行けばオアフ島など単一の島においてロウルを見ることができますが、ロウルの果実はほとんどがネズミによって食べられてしまい、新しい芽が発芽できない状況になっています。したがって、今後現状のままで推移した場合、ロウルが野生の状態で生き残っていけるかどうかは未知数です。

ロウルはハワイ語で「」を意味しており、古くからハワイ人がその大きな葉を日傘や雨傘として利用していたため、この名がつけられたと考えられています。また、ハワイ人はロウルの葉を編んでマットや編み物を作ったりしたともいわれています。

世界のヤシ

世界には日本やハワイで見られるようなヤシの木とは一風変わった種類を見ることができます。

70m越えも?コロンビアのワックスヤシ

南米・コロンビアの国樹でもあるワックスヤシは、世界一背の高いヤシの木として知られています。標高2400mの位置にあるココラ渓谷では、樹高が60~70mを超えるようなヤシの木が無数に生えている様子を見ることができ、観光スポットとしても根強い人気があります。

ナツメヤシは日本の食生活にも馴染みあり

北アフリカやペルシャ湾岸が原産地とされるナツメヤシは、樹高が15~25mと全体的にそこまで高くないものの、人々の生活には欠かすことのできない役割を担っています。ナツメヤシからとれるデーツと呼ばれる果実は、アラブ諸国や北アフリカ地域において古くから貴重な食物として重宝されています。特にイスラム諸国では、教徒に日の出から日没までの間の断食を課すラマダーン期間中、日没後に最初に口にする食事とされています。

日本でもデーツは馴染みが深く、広島風お好み焼きに欠かせないお好みソースの原材料にデーツが使われています。デーツを使うことにより、ソースにとろみや甘味を出すことができるのです。また、お好みソースだけでなくウスターソースや、トンカツソースの原材料の一つとして、デーツが利用されている商品もあります。

利用価値の高いココヤシ

日本の沖縄やハワイでも見られるココヤシは、ポリネシア地方などの熱帯地方でも頻繁に見ることができます。特に熱帯地方のココヤシは、高いもので30mを超えるような樹高にまで生長することでも知られており、日本や沖縄ではお目にかかれないサイズにまで育ちます。

また、ココヤシは人々にとっても利用価値が非常に高い植物としても知られており、幹や茎は材木として用いられ、かつてはダウ船と呼ばれる木造船の材料としても活用されました。葉は屋根を葺くこともできますし、繊維を編むことで敷物や籠等に加工することもできます。

さらに、ココナッツと呼ばれる果実には液状胚乳が入っており、飲用できます。熱帯地方は往々にして生水の飲用が危険であると言われることからも、ココヤシが飲用水としていかに重宝されているかがわかります。

ちなみに、ココヤシの果実は水によく浮かぶため、潮流に乗って種子を遠くまで運ぶことに適しています。

東南アジアの親王椰子

ベトナムやラオスなどの東南アジアに自生するのが、親王椰子(シンノウヤシ)です。大型化する傾向のあるヤシ科にあって、平均的な樹高が2~4mと、比較的小型の品種と言えます。

熱帯地域に自生するヤシですので、10~15℃以上の気温が常時必要で、気温がそれ以下に落ちる地域などでは室内での観葉植物として親しまれています。病害虫や多少の土壌変更にも対応できる強さを持っています。

小さな1cm程度の食用可能な果実が成り、ナツメヤシの果実であるデーツに似ていることでも知られています。

 

ヤシの生える地域の観葉植物

比較的温暖な気候を好むヤシの木ですが、ヤシが生えるような環境下では、どのような観葉植物が見られるのでしょうか?

本土でも顔なじみ?沖縄原産のシマトネリコ

日本の中でも温暖な気候の沖縄。やはり日本本土とは一風変わった観葉植物を見ることができますが、意外と日本本土でも見られるような樹種を見つけることができるのも面白いところです。

シマトネリコは、沖縄をはじめとする東アジア圏を原産とする常緑の観葉植物です。沖縄のような温暖な地域原産の植物なので寒さにはやや弱いですが、マイナス5℃程度までなら越冬できるため、軽やかでスマートな樹形から日本本土でも戸建てやマンションの植栽として根強い人気があります。シマトネリコの樹高は高いもので10mを超えるものもありますが、一般的な植栽に見られるようなものだと1~5m程度の樹高が通常です。

南国情緒満点のハワイの観葉植物

ハワイの観葉植物は、南国情緒漂う樹種が多いと言えます。モンステラやパキラなど、大きな葉を持つ樹形が特徴の品種もあります。特にモンステラは贈答用としても広く用いられ、大きいものでは15000円以上の高価なものもあります。切れ込みの入った大きな葉が最大の特徴で、室内で水やりを頻繁にしなくても簡単に育てられるため、観葉植物初心者にも人気があります。

パキラは手のひらのような5枚の葉を特徴とする植物で、乾燥に強い上に病害虫も付きにくいことから、パキラと同じく手軽な観葉植物として日本でも人気があります。インテリアとの相性も良く、明るい室内で簡単に育てられるため、リビングに置いておくと部屋全体の雰囲気が明るくなります。

いかつい顔つき?南米原産のセローム

南米原産の観葉植物は、独特の雰囲気を醸し出す樹種が多いです。中でもセロームは、独特の風貌をしたごつごつした幹と、四方に広がる大型な葉から、まるで何かの不気味な生物を思わせるような観葉植物です。日本でも新築時のギフトなどで親しまれており、部屋の中に一株あるだけでかなり強い存在感を放ってくれる植物です。

Philodendron selloum フィロデンドロン・セローム / jetalone

南米の温暖な地域が原産で、温暖な気候を好みますが意外と直射日光に弱く、当てすぎると葉焼けを起こしてしまいます。耐陰性はあるものの寒さに強くないため、意外と初心者にとっては管理が難しい樹と言えるかもしれません。また、ハダニやカイガラムシ等、様々な病害虫が付く樹種でもありますので、育てるためには少し神経を使う樹です。

女性に人気の可愛い多肉植物はアフリカ出身

主婦の中で人気の多肉植物は、実は北アフリカや南アフリカを原産とする観葉植物です。エケベリアやセダムなどは、かわいらしい見た目とプチっとした葉を特徴としており、マニアの方などは複数の多肉植物を株分けや葉挿しで増やしたり、寄せ植えにするなど様々な楽しみ方があることでも知られています。

値段も非常に安価で、数百円程度で複数の株を買えたりする等、初心者でも気軽に多肉植物栽培を始めやすいのが特徴です。ネットのオークションなどでは、綺麗に寄せ植えした多肉植物が高値で取引されており、主婦のちょっとした小遣い稼ぎの手段としてもメジャーになりつつあります。

 

幸運を呼ぶガジュマル

東南アジア・沖縄原産のガジュマルは、濃い緑色の葉が元気な印象を与えてくれる、観葉植物初心者にとっても育てやすい樹種です。また、幸せをもたらす精霊が宿っていると言われるとてもロマンのある観葉植物です。生長するにつれて株元が分かれていき、タコのように数本の足があるように見えることから「多幸(たこう)の樹」と言われることもあり、親しまれています。

こうしたことからも非常に縁起の良い樹として、就職や出産、お祝い事などの時に贈り物としては最適な樹と言えるでしょう。

 

まとめ

ヤシの木は基本的には温暖な気候を好み、熱帯や亜熱帯地域で多くみられる樹種ですが、日本やその他の地域でも頻繁に見かけることができます。既に述べてきたように、育ち方や樹形が生育する環境によって大きく影響を受けて、その地域の特色を色濃く反映する木として親しまれています。また、各地域において人々の生活や食ともつながりが深く、日本においてもヤシの木と人間生活は切っても切れない間柄にあると言うことができます。

また、ヤシの木が育つ地域の観葉植物も、その地域の特色を反映した品種が数多く存在します。街の植木屋さんでは、世界各国のヤシの木の仲間や観葉植物に見ることができますので、たまには各地域に思いを馳せながら植物と触れ合うのもいいかもしれませんね。

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